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京都家庭裁判所 昭和56年(少)6217号 決定 1982年1月06日

少年 S・Y(昭四一・五・一一生)

主文

少年を初等少年院に送致する。

理由

(非行事実)

本件記録中の少年に関する司法警察員作成にかかる昭和五六年七月一六日付少年事件送致書、同年一〇月二三日付少年事件送致書、同年一二月一一日付少年事件送致書記載の各犯罪事実と同一であるから、ここにこれを引用する。

(法令の適用)

窃盗の事実 刑法六〇条、二三五条

暴力行為等処罰ニ関スル法律違反の事実同法一条

傷害の事実 刑法六〇条、二〇四条

暴行の事実 刑法二〇八条

(処遇決定の理由)

少年は、中学校入学後次第に学習意欲を失い成績も低下し不良交遊・夜遊び・万引等問題行動を生ずるようになり、その後さらに校内で学校側の指導に従わず粗暴な言動を示しいろいろ問題行動を繰り返していた不良グループに加わり教師反抗・授業妨害をし他の生徒に暴力を振うなどしていたもので、昭和五六年六月本件窃盗・暴力行為等処罰ニ関スル法律違反の各非行を犯し同年一〇月八日当裁判所で既に送致されていた前記窃盗事件により試験観察決定を受けたが(なお少年は、同年九月一〇日前記窃盗事件につき当裁判所調査官の面接調査を受けており、前記傷害事件はその後審判までの間に犯したもので、前記試験観察決定当時判明していなかつたものである)、その後さらに本件暴行事件を起こしたものである。

なお少年は、今回の調査審判時に「中学三年生になつた同年四月ごろから同年一一月上旬ごろにかけて他の生徒達に対する恐喝をかなりの回数繰り返しており、同月二一日ごろ前記不良グループの生徒達が起こした凶器準備集合事件にも加わつていた」旨供述しており、そのうち恐喝七件と凶器準備集合事件が後日送致されて来る見込である。

少年の知能は普通知であり基本的な能力には問題はないと考えられるが、思考内容は非常に幼く関心の幅も狭い。口蓋裂のため幼いころにいじめられたことなどから素直な対人関係を持ちにくく、ささいなことに腹を立て暴力を振うなど感情統制できにくい点が目立つている。他から受け入れる形で自己主張する術を知らず問題行動に出て不満を解消することになりがちであり、特に中学三年生になつて後は卒業後の進路の問題もあり学校生活にも適応できず家庭に対しても不満を感じ不快感を抱くことが多かつたようである。

家庭も両親が安定した夫婦関係を持てず、それぞれこれまで親としての役割を十分果たすことができなかつた。(父親は子供の養育に関心が薄く母親まかせであり、母親は少年に対しいろいろ注意はしていたようであるがかえつて少年の反撥を招き家庭の雰囲気はなごやかさが乏しかつたようである。)

少年は、今回の調査審判時に自己のこれまでの行動を反省し進学を目標にやり直したいとの意欲を見せていたが、少年の学力やこれまでの成績では高校や少年の希望する専門学校等への進学はかなり困難なようである。また家庭の状況にも大きな変化はなく(もつとも前回調査審判以後父親が少年の監護につき積極的な態度を見せ始めていたことは認められる)その保護能力にも多くを期待することはできない。学校側も指導の限界を感じている。

以上のとおりであつて、少年の資質・環境・これまでの行状・処遇の経過等に鑑みると、少年の健全な育成を期するためにはこの際少年を初等少年院(一般短期処遇)に収容保護して矯正教育を施すことが必要かつ相当であると考えられる。(なお前記のとおり進学の見通しはかなり困難なようであるが、少年・保護者が進学への強い希望を有しており中学校側の協力も得られるということなので、少年に対する処遇は一般短期処遇特修科の処遇によることが相当であると思料する。)

よつて少年法二四条一項三号、少年審判規則三七条一項、少年院法二条二項により、主文のとおり決定する。

(裁判官 福井一郎)

〔参考一〕 司法警察員作成の少年事件送致書の犯罪事実

一 (昭和五六年七月一六日付け)

被疑少年S・Y、同Aは、共謀のうえ、昭和五六年六月四日午後五時二〇分ごろ、京都市○○区○○町××株式会社○○前路上において同所を自転車に乗つて通行中のB子三九歳の背後から自転車で、右B子が自転車の前かごに入れ所持していた同人所有にかかる現金五、五五六円及び財布(ガマ口)一個時価二、〇〇〇円、コンパクト二個時価三、〇〇〇円他四点在中の手提げ袋時価五〇〇円計一一、八三六円相当をひつたくり、窃取したものである。

二 (昭和五六年一〇月二三日付け)

被疑少年S・Y及びC両名は共謀のうえ昭和五六年六月二八日午前九時一五分ごろ、京都市○○区○○通○○町××○○映画劇場内に於いて、観覧客Dから面を切つたと因縁をつけられたことに腹を立て、右Dに対し傘を床又は壁にたたきつける等威嚇のうえ手拳で右顔面を殴打しあるいはこずきまわすなどし、もつて両人共同して暴行したものである。

三 (昭和五六年一二月一一日付け)

被疑少年S・Yは市立○○中学校においていわゆる番長として粗暴的不良グループを形成し、自己において直接行為するのは勿論、輩下グループ員を扇動するなどして教師反抗、授業妨害を重ねるなどしているもので、

1 グループの威を誇示するため輩下の被疑少年A一五歳、同C一五歳と共謀して昭和五六年九月二四日午前九時三〇分頃京都市○○区○○町××番地市立○○中学校中校舎三階三年四組教室前廊下において、被害少年同校三年生E一四歳に対し「約束したレコード何日持つて来るね」等と因縁をつけ同人において手拳、足等で顔面、腹部、胸部を殴打し又は足蹴りし、被疑少年C、同Aにおいて、こもごも殴打又は足蹴りするなどの集団暴行を加え、その結果、右被害少年Eに左第六、七肋骨不全骨折、通院二週間を要する傷害を与えたほか、

2 昭和五六年一〇月一七日午前九時四〇分頃右同校プール下の更衣室において、被害少年同校三年生Fに対し自己の威を誇示するため手袋をはめた右手拳で同人の顔面を殴打し、あるいは倒れ込んだ同人の顔面、背部を足蹴りするなどの暴行を加えた

ものである。

〔参考二〕 少年調査票<省略>

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